抗菌・抗ウイルスコーティングのメリット・デメリットとは?
新型コロナウイルスが猛威をふるう中、さまざまな感染対策の努力がなされています。しかし多くの人が利用する施設やオフィスでは、人の手による毎日の清掃には限界があるのが現状です。そこで注目されているのが抗菌・抗ウイルスコーティングです。今回は、抗菌・抗ウイルスコーティングの仕組みやメリット・デメリットについて解説します。
抗菌・抗ウイルスコーティングとは
まずは抗菌・抗ウイルスコーティングとはどのようなものなのか見ていきましょう。抗菌・抗ウイルスコーティングは、ウイルスが付着した手すりやドアノブに触れた手を介して感染する接触感染のリスクを減らすためのものです。
抗菌・抗ウイルスコーティングを行った場所にウイルスや菌が付着すると、コーティング剤の成分がウイルスを不活性な状態に変化させます。感染力や毒性をなくすだけでなく、ウイルスの増殖を抑えるという効果もあります。その効果が注目され、最近では多くの人が利用する公共施設や医療施設、公共交通機関やオフィスなどを中心に、さまざまな場所で幅広く利用されています。
抗菌・抗ウイルスコーティングの種類ごとの違い
抗菌・抗ウイルスコーティングにはいくつかの種類があり、種類ごとに仕組みや効果が異なります。以下では、代表的な抗菌・抗ウイルスコーティングの種類とそれぞれの特徴について紹介します。
光触媒
光触媒は抗菌・抗ウイルスコーティングの中でも最も一般的で効果のある方法です。光触媒に用いられるのは「酸化チタン」という成分で、酸化チタンは太陽や蛍光灯などの光を受けると、空気中の水分や酸素と反応し「活性酸素」を生み出す性質があります。この活性酸素がウイルスを攻撃し、ウイルスを不活性化するのです。光触媒に利用される酸化チタンは安全性の高い成分で、健康に悪影響を及ぼす恐れがないため、不特定多数の人が利用する場所で幅広く施工されています。
銀イオン
銀イオンは、制汗剤などにも使われている身近な成分なので、抗菌のイメージがつきやすいかもしれません。銀イオンによる抗菌・抗ウイルスの仕組みにはいくつかの説がありますが、その中でも前述の「光触媒効果」と「銀イオンそのものの効果」が発揮されていると考えられています。銀イオンは不安定な物質で、すぐに周りの物質と結合しようとする性質があります。
そのため、ウイルスの内部にまで侵入し、機能維持に必要なアミノ酸やたんぱく質などと結合することで、ウイルスの機能を停止させます。銀イオンは、こうしたメカニズムでウイルスを不活性化さますが、この場合は銀イオンが別の物質に変化してしまうため、銀イオンの総量が減っていきます。持続的な効果は期待できないので、効果を維持するために、「光触媒効果」と掛け合わせて利用されていることが多いようです。
プラチナ
プラチナは、光触媒や銀イオンとは真逆のメカニズムで抗菌・抗ウイルス効果を発揮します。抗菌・抗ウイルスコーティングに利用されるプラチナはナノサイズの微粒子で使用されることが多く、水をまとった形状になっています。常に電子を発生させており、その電子が安定を求めて周囲のウイルスから酸素を奪うことでウイルスを不活性化するのです。この仕組みは還元作用といい、光触媒や銀イオンの酸化作用とは異なるメカニズムになっています。
抗菌・抗ウイルスコーティングのメリット・デメリット
続いて、抗菌・抗ウイルスコーティングのメリット・デメリットについて見てきましょう。抗菌・抗ウイルスコーティングの商品では、光触媒コーティングが最も一般的で広く普及しているため、ここでは光触媒コーティングのメリット・デメリットを紹介します。
光触媒コーティングのメリット
光触媒には、抗菌・抗ウイルス効果はもちろん、汚れをつきにくくする、嫌なにおいを抑える、空気をきれいにするなど、さまざまな効果があります。一度コーティングをすれば長期間効果が続くため、こまめに除菌を行うよりも手間が少なく、より衛生的な環境を維持できるでしょう。安全性も認められているため、小さな子どもやペットが触れる場所、食品を扱う場所などどんな場所でも施工できるという点も大きなメリットといえます。
光触媒コーティングのデメリット
光触媒は、光に反応して抗菌・抗ウイルス効果を発揮するため、光の届かない場所や光が弱い場所ではその効果が弱くなってしまう製品が多くあります。また、コーティングに費用がかかることをデメリットに感じる方もいるかもしれません。業者にコーティングを依頼する場合は、ある程度まとまった費用が必要になるでしょう。ただし、のちにかかるメンテナンス費用を考慮するとコストパフォーマンスは高いのではないでしょうか。
まとめ
今や定着しつつある新しい生活様式において、抗菌・抗ウイルスコーティングは大きなメリットをもたらすといえるでしょう。デメリットを克服するような製品の開発も進んでおり、より衛生的で安心な暮らしが実現していくのではないでしょうか。抗菌・抗ウイルスコーティングを利用する際は、メリット・デメリットをよく理解した上で正しく使い、便利で快適な環境をつくっていきたいものです。